【書評】ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門

はじめに

 本記事は「ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門」についての書評です。

著者は原野守弘さん。セールスを10年以上経験したのちにクリエイティブディレクターに転身し、代表作「森の木琴」は2011年にカンヌ国際広告祭で金賞を受賞。その他にも、「日本は、義理チョコをやめよう」(GODIVA)、「Great Journey」(Honda)など数々の作品を手がけられています。

ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門 [ 原野 守弘 ]

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ビジネスパーソンが見落としている人間の性質とは?

 ビジネスパーソンとクリエイターの一番の違いは、人間への理解と言ってもいいでしょう。
多くのビジネスパーソンは、人間を「論理的な生物」だと考えています。一方で、プロのクリエイターは人間が「感情的な生物」であることを認識しているのです。例えば、日本人はApple製品ユーザーが多いことで有名ですが、このこと自体が「感情的な生物」であることを示しています。なぜなら、人間が「論理的な生物」ならば、Apple製品よりも価格が安く同等のスペックを持つ製品を選択するはずだからです。他にも、体に悪いとは分かっていながらもファストフードやお菓子をついつい手にとってしまう、完全に正しいことを指摘されているのに納得できない、など非論理的な行動をとってしまう場面が往々にしてあります。クリエイターは、この「人間は感情でしか動かない」ということを理解しているのです。

全てのクリエイティブは「個人的な好き」から始まる

 では、どのようにしてクリエイターは世界中の人を魅了しているのでしょうか。答えはシンプルで、「好きなものの共有」です。クリエイティブは、「個人的な好き」から始まりそれを共有することで、個人的な好きに共感する人からの支持が集まります。好きな漫画や好きな音楽、好きな歴史上の人物など、同じ「好き」を持っている人に仲間意識が芽生えた経験は誰しもがあるはずです。まずは自分自身が何が好きなのか、を認識するところから始めましょう。

「好き」の市場的ランクを上げる方法

 「個人的な好き」がクリエイティブの始まりならば、クリエイターの素質が全員にあることになります。しかし、だからといってクリエイティブ初心者が何度もヒット作品を生み出せる訳ではありません。著者の原野さんによると、「好き」の目利きには市場的なランクがあるそうです。つまり、「今から制作するこの作品が世界中の人の『好き』に刺さるか」ということが分かるということです。プロのクリエイターはその目利きの精度が高く、高頻度でヒット作品を生み出すことができます。その「好き」の目利きの精度を上げる方法の一つとして「名作と呼ばれる作品を片っ端から見る」ことが挙げられています。ただひたすら名作を見ることによって、「好き」のセンスが磨かれるそうです。

感想

 クリエイターを志す人にとってはもちろん、ビジネスパーソンにもおすすめできる内容です。企画書や新製品の開発、企業のブランディングなど人を惹きつけることが求められる仕事はクリエイター以外にも必ずあります。そこで、クリエイティブな考え方や技術をもったビジネスパーソンであれば、自ずと他の人と差をつけて結果を出すことができるでしょう。本書では、今回紹介した内容に加え、実際に作品(クリエイティブなもの)を作る際にどのようなステップを踏めば良いか、ブランディングのコツ、広告の本質、今まで手掛けてきた作品の裏話などが収録されています。興味のある方は是非ご覧になって、クリエイターとしての側面を身につけてみてはいかがでしょうか。

「森の木琴」
「OK Go – I Won’t Let You Down」